表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > キャッシュレス(令和2年1月)
ハワイ旅行の続きです。コナの町でスパゲッティとビールの昼食をとりました。食事中、ずっとハワイアンを演奏していた、ギター弾きのおじさんにチップをはずもうとしたところ、小銭を持ち合わせていないことに気がつきました。
成田空港で、少しドルが買ってあったのですが、コナに来るまで、一度も現金で支払いをせず、クレジットカードを専ら使っていました。小銭がポケットになかったのです。
レストランをはじめ、博物館の入場料もバス、タクシーもカードでした。現金の要らないキャッシュレスの世界なのですね。数年前には確かあった、現金支払機は、目につかなくなっていました。
現金を持ち歩かない人が増えたら、大道芸人や、ホテルのポーターのように心付で生活している人には大打撃です。もしかしたら、現地の人は、万一に備えて、少額の現金を持っているのかもしれません。今回の旅行中、そういう考えが浮かばなかったので、確かめませんでした。
日本は、比較的に安全なので、かなり高額の現金をもって外出しても不安はありません。それが、キャッシュレス化を遅らせている原因だといわれます。しかし、キャッシュレスの便利には、抵抗できないと思います。やがて、急速に、日本もキャッシュレス化するのではないでしょうか。
その話をすると、困るのは、大道芸人たちだけではなく、神社仏閣のお賽銭はどうなるのだという心配をする人がいました。
いくつかのお寺や神社で、実験的にキャッシュレスのお賽銭を受け取る機械を導入しているようです。物珍しさから利用する人もいるようですが、利用者は少ないようです。
賽銭を賽銭箱に投げ入れるとき、人は賽銭箱を尊んでお金を入れるわけではありません。賽銭箱の向こうにいます、ご本尊様に献じています。そのつながりがカードやスマホでの喜捨では薄れるように思えます。
少なくない寺社が、お賽銭を重要な収入源にしています。キャッシュレス化が進めば、早晩、何らかの対策が必要になるでしょう。
こんなのはどうでしょう。スマホに「お賽銭」というアプリをインストールします。お参りをして、スマホを御宝前に向けお賽銭のアイコンを押すと、画面にご本尊あるいは祭神があらわれます。お寺ですとお釈迦さまでしょうか。参拝者は任意の金額を打ち込み、決定を押します。すると、お釈迦さまは合掌して感謝します。100万円を超えた賽銭を上げたスマホのお釈迦さまは、にっこり笑います。やりすぎですね。
未来の正月の新聞に、こんな記事が載るかも知れません。
未「明治神宮で賽銭上げられず。参拝者が予想を超え、サーバーが不調に」
石川恒彦