表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 孫と映画に(令和5年4月)
春休みの孫と映画に行くことになりました。孫に見たい映画があるかと聞くと、「別に」といいます。本当にないのか、祖父に遠慮してなのかわかりません。困ったのは私で、近所の映画館を当ってみましたが、うまい映画が見つかりません。
コロナ前は、妻と良く映画に行っていたのですが、このところすっかりご無沙汰で、映画への関心も薄れていました。
漫画映画はどうも私の好みではありませんし、暴力、セックスは、孫とみるのに適していません。ようよう行き当たったのが「雑魚ども、大志を抱け」です。地方都市の少年たちの物語だといいます。気になったのは、R12指定だったことです。これは12歳以上の観賞を推奨しています。私の孫は、4月から高校ですので、問題はないのですが、何か、子供が見てはいけない話や、場面があるのかと思いました。
孫にLINEすると、「いい映画を探してくれてありがとう」と返事がありました。早速座席の予約を入れました。上映館も少ないし、上映日も毎日では無い人気のない映画のようですから、予約の必要はないとも思ったのですが、万一劇場に行って満員だと孫がかわいそうと思って、慣れぬスマホで予約しました。そこまではよかったのですが、クレジットカードで支払いを済ませ、予約完了となったときに、整理番号を書き留めずに電源を切ってしまいました。
いらぬ心配をかけてはと、孫には黙って、当日映画館に行きました。ちょっと心配でしたが、窓口に行き、事情を話し、名前を言ったらあっさり発券してくれました。空いていたからでしょうか、あるいは私のような老人が多いからでしょうか。
映画は、それぞれ問題を抱えた家庭を持つ四人の少年の物語です。彼らは悪ガキです。万引きはするは、池のサンショウウオは殺すは、したい放題です。しかし彼らは不良グループに狙われます。鉄道線路が特別の役割を持っています。
私は、見終わった後、アメリカ映画「スタンド・バイ・ミー」を思い出しました。ただ、アメリカ版は、四人は単なるイタズラ少年ですし、鉄路に沿って、死体を探すという冒険が中心です。不良グループとの反目もありましたが、円満に解決しています。日本版では、荒唐無稽な戦いと勝利の後、仕返しはどうなるのだろうと心配させます。
若いころには、親兄弟や友人たちと、よく映画を見に行きました。今の若い人たちはどうなのでしょう。どうも、テレビやパソコンに夢中で、なかなか家族で出かけることはないようです。映画が斜陽といわれて長い年月が経ちました。今回の映画館も親子連れは目立ちません。ましてや老人と一緒という子供は見かけませんでした。
良質な映画も数多く作られていますが、親子で鑑賞できる娯楽映画は少ないようです。涙をこれでもかと流させる木下恵介や、血の出ないチャンバラをたっぷり見せる東映時代劇が復活するとは思えませんが、十分に練られた脚本で作られた、本格的娯楽映画は観客を呼べるのではないでしょうか。
映画はちょっと不満でしたが、孫は、妹も連れてくればよかったといってくれました。なんだか、うれしくなりました。寿司をおごって家路につきました。
石川恒彦