表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 不快な一日(令和5年12月)
何をやってもうまくいかない日があります。
今日は、妻がデイサービスに行く日ですので、着替えを済ませ、薬や下着をバックに入れ準備が整いました。迎えの乗り合いの車が来たので、玄関を出ようとすると、用足しをしたいといいました。仕方なく、頭を下げて車に待ってもらいました。
思い立って、金婚式の時の集合写真を印刷に出そうと、USBメモリーに移そうとしたら、どうしてもUSBポートに挿し込めません。電気をつけて、虫眼鏡で両方を見ましたが、規格の違いではなさそうです。単に私のメモリーが古く、どこか変形してしまったようです。
庭の椅子にペンキを塗っています。昨日、さび落としをして、白いペンキで塗りました。今日は続きをやろうと、椅子の背中を持つと、昨日やったところがパラっと落ちました。古いペンキが浮いているのを剥がし損なっていたようです。
昼はソバにしようと、いつもいく蕎麦屋に行きました。改装で、ひと月休業と掲示が出ていました。
仕方がないので、駅前に行き、ビールが売り物の飯屋に入りました。お昼の定食とコーヒーを注文しました。食事が終わってもコーヒーがなかなか来ません、店員も私に注意を向けてくれません。仕方がないので、コーヒーはあきらめて帰ろうと立ち上がりました。気が付きました。私にだけおしぼりが来ていませんでした。
帰るとお寺の空き地に囲いを作っています。悪い予感がして、数日前に植えた、松の小さな苗木を探すと、見事に抜かれていました。
妻がデイサービスから帰ってきました。車椅子を押すと、左の車輪の空気が少なくなっています。ここのところよく抜けるので、レンタル会社に電話しました。住所と名前を告げると、画面に私たちとの契約が出たようです。そこで車いすの空気が抜けやすいことを訴えました。それからがいけません。どうやらマニュアルに従って質問しているようで、左右どちらの空気が抜けるのかとか、毎日どれぐらい使うのかとか細かいことを聞いてきます。その上、車いすの交換には一週間以上かかりますなどといいます。自転車の空気が抜けやすかった経験のある人は誰でもご存じのように、この場合、バルブかバルブについている虫ゴムを取り換えれば解決します。彼女の話をさえぎって、とにかく見に来てほしいとお願いして電話を切りました。
少し前の私なら、上のどの経験でも、イライラしたり怒ったと思います。それが年の功ですか、意外に冷静でした。というより、体力がなくなり、イライラしたり怒ったりが面倒だったのかもしれません。
近頃、年寄りがコンビニなどの店員を理不尽に怒鳴ることが話題になっています。カスハラというそうです。どうやらこれは、変化についていけない老人が、昔と違う店の対応にイライラして怒鳴るのではないかと思います。
店員さんには気の毒ですが、私から見ると、体力の余っている不逞老人が羨ましく見えます。でも、年相応に衰えた自分をありがたくも思っています。
石川恒彦