表紙 > 隠居からの手紙 > バックナンバーもくじ > 捨てる(平成23年1月)
ドイツ製のコーヒーメーカーを重宝に使っていました。そのガラスのポットを割ってしまったので、電気屋に問い合わせると、手に入らないといいます。インターネットで調べると、その製品はすでに廃番で、付属品の販売もやめているといいます。仕方が無いので、コーヒーメーカーを捨てました。
数カ月して、戸棚の奥を整理していると、ポットが出てきました。前に割れたとき、二つ買ったのを忘れていました。仕方が無いのでポットを捨てました。
今年になって、旅行をしようと、スーツケースを押し入れから出しました。ところが鍵がありません。家中、心当たりを探しましたが、ありません。使い道の無くなったスーツケースは粗大ゴミとして、お金を払って捨てました。
暮れに大掃除をしていると出てきました。一番目立つ壁に掛けてありました。忘れないようにとそこに置いたのですね。でも、盲点でした。
所帯を持った子供たちが、家に置いて行った荷物があります。いつも早く処分をしてくれと言っているのですが、言う事を聞いてくれません。雑誌、漫画、CD、中学の制服。捨てていいのでしょうが、勝手にするわけにはいきません。
とうとう先日、次女が整理に来てくれました。彼女は手際よく、捨てるものと持って帰るものを分けて行きました。それでも判断が付かないものがあって、私に相談に来ました。コーヒーメーカーやスーツケースの経験があったので、私は「ムニャムニャ」と答えました。娘はもう少し働いていましたが、結局、ムニャムニャの部分は次回と言う事になりました。ムニャムニャの部分はかなりありましたが、まあ仕方がないかと思いました。
荷物の整理は時間のかかるものです。特になつかしいものが出てくると、なかなか捨てられません。決断力が必要なようです。また本や作文は曲者です。つい読んでしまうと、時間が無駄に過ぎていきます。そこでこの頃は、本人に代わって整理をしてくれる業者もあるといいます。
そう考えると娘はなかなかよくやったと思いました。ところが、妻はそうは考えなかったようで、残った荷物を見ると、「おとうさんは甘いんだから、もっと、チャンと言って下さい」と、怒られました。
石川恒彦